ストーリー

カンボジアで、地雷撤去の作業中に巻き込まれて爆死した、行方知れずだった兄。

妹の勝呂 瞳(すぐろ ひとみ)は、幼い頃、家族で住んでいた地の、廃小学校の校庭に、兄が自分で建て

そして住んでいたツリーハウスがあることを知る。

撤去するにあたり、兄の遺した8mm機材を引き取って欲しいと市役所から連絡を受けたのだった。

瞳にとっては記憶のない、その遠く離れた地をひとり訪れた。

そして、兄の建てたツリーハウスを目の当たりにしたとき、瞳の中で小さくなにかが揺れた。

兄を慕う郵便局員 正や、海の上を走った伝説を話す永岡、兄の遺した

ツリーハウスを残したいと思う人々に囲まれ、みんなで映画を作ろうと持ちかけられる瞳。

瞳はしばし、その地にいることにした。

兄の考えていたことをもう少し感じたかったからだった。

そうして、まったく映画などつくったことのない素人の集まりで、試行錯誤の映画づくりが始まった。

チャンバラと香港アクションの融合というハードルの高いストーリーに、

昔演劇をやっていた市役所職員、本物の殺陣師の厳しい怒声、ヒロイン役のスナックのママの降板、

ツリーハウスの撤去の決定、波乱続きの映画作りは頓挫しかける。

しかし、兄が生前カンボジアで使っていたボロボロの8mmカメラの中に未現像のフィルムがあった。

そのフィルムに映っていたもの。

そこには兄は存在していないが、撮影していた兄の息吹きが確かにあった。

まるで瞳に語りかけるように。

はたして、皆の思いを孕んだ、映画は完成することが、できるだろうか。


兄は昔、海の上を走った。

バカバカしいくらい、記憶って奴は都合良く膨らんでしまう。

でも確かにあの夏、兄は海の上を走ったんだろう。

だから私も走る。あの地平に向かって。

兄の遺したツリーハウスから始まる、恋と、ノスタルジックと、冒険。それは夏の幻影であり、まぎれもない事実。